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【王の病室】1巻 未知の医療ドラマを紹介 金からは 逃げられない
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健康でいたい。
これは誰もが持つ願望。
日本は医療制度において、世界でもトップクラスで恵まれている国です。
日本には国民皆保険という制度があります。
ざっくり説明すると
いつでも、誰でも、必要な医療サービスを少ない費用負担で受けることができます。
引用元：世界に誇れる日本の医療保険制度｜日本医師会
というもの。
今回紹介する【王の病室】は、この制度に真っ向からメスを入れる漫画です。
金がなければ人を助けることができないのか。
採算度外視で目の前の患者を助け続けた医院は閉院。
日本は長寿大国でありながら、老後の寝たきり生活を送る人が多く、人生最後の10年を動けず終える人もいます。
誰もが目をそらしたくなるも、直視せざるをえない金の問題。
金と情が渦巻く医療サバイバル漫画、【王の病室】を解説させていただきます。
批判を承知でこういう漫画を描ける作者には脱帽です。
目次
作品概要 ・あらすじ
- 原作 ：灰吹 ジジ
- 著者 ：中西 淳
- タイトル：王の病室
- ジャンル：医療サバイバル
- 出版社 ：講談社
- 連載誌 ：ヤンマガWeb
- 最新刊 ：1巻(2023年9月)
- 媒体 ：電子書籍、単行本、週刊誌
引用元：王の病室 1巻
儲かる医者になりたい。
医院を倒産させた父親を持つ赤城 誠一はそんな夢を持つ。
学業の成績はほぼトップ。
順調に医学部を卒業した彼を待っていたのは、年収350万円から始まる研修医の仕事だった。
夜勤当直が終わればそのまま36時間の連続勤務に突入。
労働基準法にケンカを売っているような業務体制だが、これが医師の現実である。
仮眠の時間はあるものの、救急の搬送がいつ来るかわからない状況で寝られる研修医はいない。
ある日、85歳の男性が救急搬送される。
患者の心肺は停止しており、心臓マッサージを繰り返すも息を吹き返さない。
しかし赤城は未経験の施術に挑み、患者の蘇生に成功する。
初めての心肺蘇生を達成した赤城の眼からは、自然と涙が流れていた。
喜びを抑えきれず、医長・高野 孝太郎に蘇生成功を報告する。
しかし返ってきた言葉は、賞賛ではなく罵倒だった。
「余計なことをしてくれる」
「患者を適度に殺すのも医者の仕事だ」
患者の苦しみ・家族の心労・治療費の負担
儲かる医者になりたいと願う赤城は、医療の現実に直面してどう動くのか―――？
王の病室の登場人物
- 赤城 誠一：研修医1年目の医者の卵。金を稼げるクリニック医師を目指している。
- 獄門院 聖（ごくもんいん ひじり）：総合内科診療科長。赤城に食事をおごったりする、一見面倒見のいい先輩だが・・・？
- 高野 孝太郎：呼吸器内科・腫瘍内科医長。淡々と医療をこなしながら、現実を赤城に突き付ける上司。
- 松下 優音（ゆね）：腎臓内科6年目の医員。病は平等という持論を持つ。
- 新島 隆雄：救急搬送されてきた85歳の男性。赤城の施術で一命を取り留める。
王の病室の見所と感想
金の重要性
引用元：王の病室 1巻
なぜこの漫画のタイトルが【王の病室】なのか。
それは金銭的な問題が大きく関わっているからです。
本作では、金に関するシビアな現実が描かれることが多い。
作中登場の新島 隆雄は、意識がもどるまでに血漿（けっしょう）交換という治療を8回行っています。
その総額、軽く見積もって160万円。
まさしく【王の病室】のタイトルに偽りなし。
あくまで最低限の見積もりなので、個室利用費などを含めればもっと跳ね上がるでしょう。
ここからは現実に行われた、血漿交換の事例を紹介します。
みなさんは高額療養費制度というものをご存知でしょうか？
毎月の医療費が一定額を超えると、あとでお金が帰ってくるという大変ありがたい制度です。
しかし何事にも例外はつきもの。
現在の血漿交換がどうなっているかわかりませんが、過去に7回までしか保険が適用されない事例がありました。
「術後肝不全に対する血漿交換は７回を限度とする。」という保険診療上の制約があります。
引用元：レセプト診査の理不尽
引用元の記事によると、体格によって治療費が変わる血漿交換は1回の施術でおよそ30万円。
施行回数は27回、総額600万円以上。
患者の家族は治療前の話し合いで、8回目の血漿交換からは自費で払うと合意していました。
しかし最終的に患者が亡くなられたため、人道的見地から病院側が負担することになります。
海外の医療制度には詳しくありませんが、日本以外ではどうなっていたでしょうか？
他にも思ったことが1つ。
給与体系にしろ高額療養費制度にしろ、赤城は自分が関わる業界についてリサーチ不足なんじゃないかなぁと。
読者に情報を伝えるための展開なのかもしれませんが、治療費を聞かれて「さぁ？」と答えては不安に思われても仕方ありません。
金の重要性がグサグサと突き刺さります・・・。
獄門院 聖の教え
引用元：王の病室 1巻
「患者を大往生させるべきだった」
「取り返しのつかない治療もある」
必死の施術で患者を蘇生した赤城に、獄門院が突きつける言葉。
かと思えば、↑画像のように赤城を励ますような一言を投げることもあります。
高い外食を赤城におごったりと悪い人物ではなさそうですが、こういう一癖あるキャラは大好きです。
ハデに髪を染めた医者が日本にいるんだろうか？とも思ってしまいますが、そこは置いといて。
そもそも苗字に地獄門という文字が並んでおり、見た目と合わせてタダモノではない雰囲気がプンプンします。
他の医師も、目に光がなかったり口角を釣り上げる笑顔だったり、無表情のキャラが多いです。
いろいろキツイことを言いながらもちゃんと対話してくれる獄門院は、赤城にとってマトモな医師仲間といえるかもしれません。
アヤシすぎて不安がないとは言えませんが・・・
平等とは何か？
引用元：王の病室 1巻
目がコワイ。
【王の病室】に登場する医師は目がヤバイ人が多いですが、この人の眼力はちょっと突き抜けてますね。
僕個人としては日本に生まれた時点で、平等とは良い意味でかけ離れた位置にいるのではと思います。
トイレは清潔・蛇口をひねれば飲める水・便利なコンビニがすぐそばに。
住む場所によって違いはありますが、これだけの条件がそろった国はそうありません。
「病は平等」と松下 優音は言います。
ブラック労働や過労死は別として、ヤバイ病原菌があふれていない日本は、健康という点ならば世界でも上位層と言えるでしょう。
国民皆保険制度が維持できるのかは、かなり不安ではありますが・・・。
それにしても、【王の病室】には普通に笑うキャラが少ないです・・・
王の病室のまとめ
引用元：王の病室 1巻
完全とはいかなくとも、ある程度は平等に治療を受けられる。
これは本当にすばらしいことです。
けれど全体の幸福はありえず、一見すれば大勢が恩恵を受けられても、どこかで誰かが重荷を背負っている。
人生をかけて医者を目指し、平均を上回る年収を稼いでいる方は確かにいるのでしょう。
患者の命をあずかる責任・体を壊しかねない連続勤務・コロナ禍であったような世間の罵倒
これらの重圧に見合った報酬なのかはわかりません。
さらに長時間勤務も加わります。
一般の医師は勤務時間が長く、1週間の労働時間が60時間を超える医師は41.8%（※）に上ります。他業種と比べて労働時間が長くなる理由として、医師の業務が多岐にわたること、勤務体系が特殊であることが挙げられます。
引用元：2024年開始予定の「医師の働き方改革」とは？ 制度内容と …
ブラック企業や不祥事を起こした会社が叩かれる世の中ですが、医療業界でストライキが起きないのが不思議な現状だと思えます。
漫画を読んだだけで知った風な口を聞くなと言われれば、ぐうの音も出ません。
けれどいくら金を積まれたところで、眠気を必死にこらえながら命を左右する職業に就きたいと思う人は少ないでしょう。
運ばれる患者はそれぞれが違う症状をかかえ、どんなに医療機器が発達しても、人の体は完璧に把握できない。
流血が多ければ1秒が患者の命を左右する。
迷いは許されず、即断即決が求められる重圧に耐えられる人間がはたしてどれだけいるのか。
もちろんすべての医師が、【王の病室】に出てくるような極限の環境に置かれているわけではないのでしょう。
それでも彼らの心を傷つけることないよう、僕たち自身が病院のお世話になる時困らないために。
誰かへの負担を増やさない生活を心がけたいものです。
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1巻は2023年9月6日に発売されました。
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